新連載

【新連載】子どもと一緒に育つ性教育 〜大人が変わると、子どもも変わる〜  4 回シリーズ(4)

京都あいこ助産院院長・株式会社PLATICA代表取締役 渡邉安衣子

 性教育というと「何を教えたらいいの?」と迷う方が多いですが、本当に大切なのは “教える内容” よりも “大人の姿勢” です。子どもは大人の言葉以上に、表情や態度から安心を読み取ります。「この先生は私の気持ちを受け止めてくれる」「ここは話していい場所なんだ」と感じられることこそ、子どもを守る力になります。

 第1回では、性教育は “人権教育” であり、幼児期こそがその土台を育てる大切な時期だとお伝えしました。体はすべて自分だけの大切な場所であること。気持ちを言っていいこと。それを支えるのは、日常の中での大人の小さな声かけです。

 たとえば、子どもが着替えの途中で「先生、見て〜!」と呼んできたとき。「今は着替えの時間だから、見ないようにするね」と優しく伝えるだけで、「見せていい時・見せたくない時がある」という感覚を自然に身につけます。特別な教材がなくても、日々のやりとりがそのまま性教育になります。

 第2回では「男の子だから」「女の子だから」という決めつけから自由になる大切さを見てきました。幼児期の子どもたちは、「あの子はこうしてるけど、私はこうしたい」と “自分らしさ” を探す時期です。だからこそ、スカートをはきたい男の子や、活発に遊びたい女の子に、大人がさりげなく「好きな遊びはだれでもしていいよ」と伝えることで、子どもの “本当にしたい気持ち” をそっと守ることにつながります。

 第3回では、性暴力から子どもを守るために欠かせない「NOと言える力」について考えました。こちょこちょ遊びで「やめて」と言ったらすぐ止める。友達との関わりで「いや」を尊重する。こうした小さな積み重ねが、子どもに「気持ちを言っていいし、聞いてもらえる」という確かな経験になります。

 そして最終回となる今回は、園全体で性教育を育てていくための実践のヒントをお伝えします。まずは、けんかの場面で「謝りなさい」よりも、「○○ちゃん、悲しかったかな?あなたはどう思う?」と気持ちに目を向けること。気持ちを言葉にする経験は、子どもの“心の境界線” を育てます。また、保護者から「子どもがこんなことを言って…」「こんな行動があって不安です」という声があがったときは、ぜひこう伝えてみてください。

 「園でも一緒に考えていきます。家で困ったら、いつでも言ってくださいね。」

 性の話題は保護者にとって大きな不安が伴うことが多いものです。先生からこの一言があるだけで、「相談していいんだ」と心がほどけ、孤立していた辛い気持ちがほっと緩みます。性教育は園だけでなく、家庭とのチームワークが不可欠です。

 性教育は特別な知識ではなく、人としてのやりとりの延長線上にあります。大人が変わると、子どもも必ず変わります。明日からも、子どもたちとともに「安心して生きる力」を育てていきましょう。