【新連載】子どもの発達を支える 3 回シリーズ(2)
滋賀大学非常勤講師 中東 朋子
担当している特別支援教育の研修の中で、子どもを 見る時に「発達」の視点を大切にしてほしいというこ とを毎年お話してきました。私は、弱視の(視力の弱 い)お子さんの通級指導教室を担当したときに、「発達」 の視点を踏まえて子どもを見ることの大切さを、子ど も達そして、保護者の方から改めて教えられました。
皆さんの目の前に、みかんがあると思って、それを つかむ動作をしてみてください。多分、手全体、 5 本 の指を使ってつかむ動作をされたと思います。
もう少し小さい、大豆ならどうでしょう。大豆にな ると, 5 本の指ではつかめません。親指と人差し指と 中指の 3 本、あるいは、親指と人差し指の 2 本でつか む、「つまむ」という動作になったと思います。
では、もっと小さいゴマならどうでしょう?今度は、 確実に親指と人差し指の 2 本指が、しっかり向き合う つまり、「対向」していないとつまめません。
小さいころから視力の弱いお子さんは,この 2 本の 指が対向するというのがなかなか出てこないのです。 なぜでしょう? ゴマのようにちいさいものが見えな かったら、つまんでみようというモチベーションが生 じない、動機が生じないのです。このように、手指の 巧緻性など運動面の発達に影響します。
また、言葉の発達も、しっかり見えているお子さんより遅れると言われています。見えているお子さんは、「これ何?」「あれ何?」とたくさん質問して、言葉を 覚えていきますが、特に少し離れた「あれ?」は見え ないので質問する必然性が生まれにくいのです。論理 的思考も、発達の遅れがなくても、見えにくいお子さ んは遅れることが多いです。「不思議だなあ」という 現象が目に入ってこそ「どうして?」「なんで?」と いう思考に入っていくのですが、動機となる刺激が入っ てきにくいのです。
これも弱視教室での経験ですが、算数の文章題で 「500円で30円の鉛筆 4 本買ったらおつりはいくらで しょう」という問題に取り組んでいた時、「お金を使っ たら減る」という感覚がもう一つつかめていないことに気づきました。保護者の方とお話する中で、視力が
悪いと危険が伴うために、一人で買い物をする経験がないということがわかりました。そこで、机にむかっての学習は一時中断して、実際に買い物に行くというところから始めました。
子どもたちにとって、成長期のいろいろな刺激や経 験が、いろいろなことを獲得する大きな力になってい るのです。それらのことは、まるで積み木を丁寧に積 み重ねるように、積み重なっていろいろなことができ るようになっていきます。それが発達です。そして、 子どもたちの様々な生活経験が発達の背景にあります から、その子はどういうところで躓いているのかを考 えながら、足りないところを支えていくようにする必 要があるのです。特に幼児期には、生活や遊びの中に 子どもたちの発達をはぐくむ要素がたくさんあります。 登園して、自分の荷物のお片づけをする中で、コップ はコップ置き場に、タオルはタオル掛けに、かばんは かばん掛になど、同じものを同じところに片づけるこ と、思いっきり水遊びや砂遊びをしながら、「多い・ 少ない」「重い・軽い」などを理解すること、かずや ことばの学習の基礎になってきます。発達の一番基礎 になる基礎感覚の中には、視覚や聴覚、触覚と共に、 があります。注意が集中しない、姿勢がしっかり保て ない、友達とうまくかかわれない(すぐに手が出る、 上手くコミュニケーション取れない等々)ということ が課題になるお子さんが結構いらっしゃいますが、こ れは、この前庭覚(前庭感覚)、固有受容覚(固有感覚) と密接にかかわるところです。外遊びより、おうちの 中での遊びが増えるなど子どもたちを取り巻く状況の 変化などいろいろな背景があると思います。そんな状 況の中で、子どもたちの発達を支えるために私たちが できることを考えていきたいと思います。