新連載

【新連載】「“体験” が学びを育てる ― 園外学習で芽生える無限の可能性」  3 回シリーズ(3)

京都府立植物園 園長 戸部 博

 幼児教育における自然体験は、「見て、触れて、匂いを嗅ぎ、音を聴く」多感覚のプロセスが重要だと感じています。京都府立植物園では、季節ごとの展示やワークショップ、職員・ボランティアによる解説や観察会などを通じて、子どもたちの学びの場をサポート
しています。短時間でも深い発見につながる工夫や導線づくりを心がけています。

 具体例としては、夏休みの食虫植物の観察会や、園内植物の採集・保存法を学ぶワークショップ、アサガオの観察会、たねを使ったクラフトなど、五感と手を動かす活動を揃えています。こうした体験は、単なる知識の習得ではなく、子どもたちが「なぜ?」と問いを持ち、自分の言葉で自然を語るきっかけになります。観察を通じて芽生える疑問は、子どもたちの探究心を刺激し、学びを自分事として捉える力を育てます。

 さらに、開園100周年記念事業としてワイルドガーデンに新設した「食草園」や「どんぐりの森」は、虫が食べる植物=食草と幼虫の関係、どんぐりや木の生活史=木が生まれてから枯れるまでの一生の流れを身近に体験できるフィールドです。園児にとっては「虫
はこわい」「どんぐりは拾うもの」といった先入観から一歩進み、命と命のつながりを自分の目で確かめる場になります。葉を食べる幼虫を見つけ、その葉を探し、どんぐりの芽生えを観察する―こうしたプロセスが、子どもたちに「生きものの循環」を実感させま
す。自然の中で起きている小さな変化を見つけることは、命の尊さを理解する第一歩です。

 また、京都市動物園・京都水族館・京都市青少年科学センターと連携した 4 園館のワークショップや、府
内の生物多様性に関わる団体が集まる「いきものフェス!」など、異なる施設と横断的に学べる機会も拡充しています。園外学習を複数施設で組み合わせれば、動物・植物・科学技術の視点がつながり、子どもたちの理解は立体的になります。例えば、動物園で「食べる動物」を見て、植物園で「食べられる植物」を学ぶことで、命の連鎖を総合的に捉えることができます。こうした学びのネットワークは、子どもたちに「世界はつながっている」という感覚を育みます。

 園庭で生まれた問いを植物園へ、植物園で生まれた発見を幼稚園へ―“往復する学び” を、皆さまとともに育てていければ幸いです。体験を重ねることで、子どもたちの感性は磨かれ、自然とともに生きる力が芽生えます。京都府立植物園は、その第一歩を支える場であり続けたいと願っています。さらに、こうした学びが家庭や地域にも広がり、日々の体験が積み重なることで、子どもたちの未来を照らす確かな “根” が育つと信じています。