輝く瞬間

【輝く瞬間】 2025年 11月

洛西花園幼稚園 園長 小山内 定代

 秋晴れの朝、金木犀の香りに包まれながら、登園してきた年長児が、「えんちょうせんせい、きょうのおそらは、にこにこしているね」と言いました。その一言に、私も思わず空を見上げました。「ほんとだね」

 何気ない日常の中で、ありのままに感じたことを言葉にして届けてくれました。その純真さに触れると、私たち大人の心まで温かく
包まれます。
「おそらが、にこにこしている」という表現は、大人の常識とは別に、感じるままの素直な心の表現ではないでしょうか。お友達と今日も会える嬉しさ、幼稚園での楽しい生活、その自分の気持ちが、お空まで笑っているように映るのでしょう。

 秋晴れの清々しい朝、今日も希望と夢を膨らませて幼稚園へ通い、楽しい時間が待っていると思えば、自然とそうした言葉が出てきたのだと思います。

 幼稚園は、子どもたちがそうした小さな発見や気づきを重ねる場所です。これからも笑い声が絶えない安心できる場として、子どもたちの豊かな育ちのために、寄り添っていきたいと思います。

【輝く瞬間】 2025年 10月

光華幼稚園 園長 西野 夕子

 園庭では、子どもたちが元気いっぱいに体を動かし、それぞれが好きな遊びを見つけて楽しんでいます。また、運動会に向けて、かけこなどの練習にも笑顔で取り組む姿が見られます。

 ある日のこと。園庭でかけっこを終えたAちゃんが、少し汗をかきながら昇降口へ向かっていたとき、靴箱の近くでふわっと涼しい風が吹いてきました。その瞬間、Aちゃんは両手を広げて「うわー!気持ちいい〜」と満面の笑みで声をあげました。何気ない一言でしたが、風のやさしさを肌で感じ、その感動を素直な言葉で表現するAちゃんの姿から、季節の移ろいをしっかり受け止めていることが伝わり、心が温かくなりました。

 秋といえば「食欲の秋」「芸術の秋」「読書の秋」「スポーツの秋」。子どもたちの心と体が豊かに育つ楽しみがたくさん詰まった季節です。日々の保育の中でも、子どもたちが「見て・感じて・聞いて・触れて・嗅いで…」といった五感を通して季節を味わい、感じる気持ちを大切にしていきたいと、改めて感じさせてくれる素敵な瞬間でした。

【輝く瞬間】 2025年 9月

山科幼稚園 園長 白旗 圭吾

「ボディペインティング」
 夏になるとボディペインティングを行います。この日は子どもたちも職員も頭からつま先まで絵具まみれ。先陣を切って先生が自分の体に絵具を塗ると、子どもたちも次第に自分の体に色を付け始めます。絵具のひんやりとした感触を味わいながら、腕、足、お腹、鏡の前に立って顔、髪の毛、やがて色鮮やかなスーパーヒーローやモンスターに変身します。
最後はもう全身泥色になって「鬼ごっこ」ならぬ「ゾンビごっこ」が始まり、そのままプールにドボンして全て洗い流します。これを全園児が行うので大変です。
そもそも子どもの遊びは「汚い」「危ない」が本質的に備わっているのではないでしょうか。後片付けが大変だからダメ!危ないからダメ!うるさいからダメ!汚れるからダメ!
それらを許容できない社会が子どもたちの貴重な経験を奪っているとしたら大変残念なことだと言い聞かせ、大汗をかきながらあちこちについた絵具を必死に掃除するのでした。

【輝く瞬間】 2025年 7月

本願寺中央幼稚園 園長 日野 昭文

 先月の十八日にプール開きを行いました。登園した年長児たちは、一目散にプールに駆けつけて口々に「今日プールに入れる?」と準備をしている先生たちに尋ねました。
「入れますよ。楽しみにしてね。」先生たちの返答に「イェーイ」と歓声を上げました。ホースから飛び出す水飛沫に我先に手を伸ばして水の感触を楽しみます。
「大きい組さんのプールは十時からですよ。お部屋に入ってください。」先生が呼掛けると、名残惜しそうに入室する年長児の姿に成長を感じました。
 年少児はプールのルールを覚えることが大変なようです。体育服から水着に着換え、消毒、シャワー、プールを出たら又シャワー、濡れた水着をぬいで身体を拭う等々。一連の流れについていくだけで精一杯です。
 そのままでいいのですよ。夏の終わりにはもっともっと楽しくなっているでしょう。

【輝く瞬間】 2025年 6月

永観堂幼稚園 園長 榊原功二

 永観堂の楓の若葉は例年にも増して勢いがあり、境内を吹き渡る風が若葉の香りを運んできます。気持ちの良い、爽快な薫風です。
 4月に入園した子どもたちも少しずつ幼稚園生活に慣れてきました。
 ある日、園庭で子どもたちが集まって何かを覗いています。見るとバケツの中に2匹のサワガニがいました。園庭を流れる小川で年長組の男の子が捕まえたようです。
「さわってもいい?」「こわいなあ」「きをつけてや」年少組の子どもたちも小さな生き物に興味津々。恐る恐る殻を触ってみたり、捕まえる
チャレンジをしてみたり。
 暖かくなってようやく活動を始めたカニがこの後どうなるのか見守っていましたが、「もう自然に返してあげよう」「カニさんバイバイ」とそのうち年長組の誰かがそう言ってまた小川にサワガニを戻してあげました。
 生き物も私たちと同じく命はたったの一つしかありません。
 園生活の中で命の大切さを子どもたちが学んでいっていることに心が温かくなる嬉しい日になりました。

【輝く瞬間】 2025年 5月

今宮幼稚園 園長 岸 省子

「せんせ…」と小さな声でつんつんと背中をつっつかれた。振り向くと年長の男の子「せんせ、あのねちょっと濡れてる」誰にも気づかれない声で囁くように私の耳元に顔をくっつけて「あんなちょっと間違えてな、ちょっと遅かっただけやねん」年長になり年少さんに優しく色々教えてあげたり、虫を見つけてあげたり、三輪車を譲ってあげてるうちにタイミングが合わなかった様である。彼の言い訳が続く。お兄さんになった彼のプライドが垣間見える。「そうなん、大丈夫だよ着替えようか」私と彼は友だちに気づかれず、そーっと二階のお部屋に行って着替えた。これは今のところ二人だけの秘密となった。すぐさま彼はまた園庭で楽しそうに遊びの続きに溶け込んでいった。

翌朝、しゃがんだ背中をつんつんと。「せんせ、これあげる!」見ると手の中に小さなお花が二つあった。両手の中に5cmもない葉っぱと青い花、つゆ草だった。「わぁ! 素敵ありがとう」私は喜びつつ、花の短さに戸惑いながらも「可愛い! これ、イヤリングにするわ」と両耳にそっと当てて「似合う?」と振り向いて聞いてみたが、彼はもうそこにいなかった。

知られたくない彼の秘密を守ったお礼なんだろうと理解した。彼が登園途中に見つけたつゆ草をペットボトルの蓋に水を入れ一つづつ浮かべてみた。五歳くらいでも気づかいをするんだなとお花を見ながら嬉しさでニタニタしている私。「つゆ草」を調べて分かった事があった。花言葉は「恋の心変わり」朝に咲いてお昼にはしぼむ花なのである。五歳の彼は知っているのだろうか。

彼が大きくなって素敵な人にプレゼントにするとして「つゆ草」はね! というのは野暮な話であるが、私の心はずっと温かいままである。そして秘密は未だに守っている。

【輝く瞬間】 2025年 4月

向島幼稚園 園長 森 美樹

春風にのって子どもたちが元気に登園してくる年度始めに、毎年見かける光景がありま
す。進級児たちの姿です。

園バスから降りて玄関までの語らいの小径を入園したての慣れない下の子たちの手を繋ぎ、歩調を合わせて歩いてくるのです。ちょっと先輩のような顔つきで、ここで挨拶するよとお手本を見せるかのように「おはようございます」と声高らかに響かせます。それを真似て新入児が前に倒れそうなくらいのお辞儀をすると「かわいいね。上手にできたね」と、私たち大人と同じ目線を送るのです。毎年、順送りの朝の一コマです。

そのあと、「おめでとう」と入園・進級を祝うかのように咲いているチューリップの中をのぞき込み「おやゆびひめさんいるね」「どこどこ」と想像力満点の会話が続くのです。まるで花に集まる小さなミツバチがモフモフとしているようです。

そのような心はずむ情景に出会える新年度スタートに、いつも心新たにするのです。

【輝く瞬間】 2025年 3月

ひまわり幼稚園 園長 手小 秀美

 二月に年長組の子ども達と雪遊びに行ってきました。

市内では、なかなか経験できない行事の一つです。大型バス、ロープウェイと乗物を乗り継いで、山頂に到着。「わぁー雪いっぱい」「さむー」と大さわぎ。荷物を置いていざ雪遊び場へ。ソリの乗り方を教えてもらい颯爽と出発!

山の上からソリに乗り滑ろうと思うが、ツルツルと滑りうまくソリに乗れず。やっとの思いで「さぁー行くよ」の声掛けと共にスタート。「ヒャーキャー」と歓声。

おっかなびっくり、足でブレーキをかけながらの滑走。子ども達の習得は早い! 二回三回とくり返すうちに、スイスイとソリに乗り「ワァーイ!」一人乗り、二人乗りいっぱい楽しみました。顔は汗でキラキラ。

帰りのバスは、楽しい「おやつタイム」。あまーい匂いがいっぱい。お疲れ様でした。

この雪がとけるころ、年長組は幼稚園とお別れ。小学校という新しい環境で、またたくさんの経験をし、新しい出会いを楽しみにがんばってほしいですね。

【輝く瞬間】 2025年 2月

紫明幼稚園 園長 増井 弘子

 ある日の預かり保育。スズランテープのぴらぴらネットが登場すると風船バレーのはじまりです。ポーンポーン年長児年中児のラリー。年少児達も集まってきて賑やかに応援です。うずうず、やりたそうな何人かの年少児。
「よせて」「いいよ」。でも、小さな子が混ざるとパスは続かず風船はすぐコートの外へ。コートの中をちょこまか動き回る年少児達。ぶつからないかとひやひやします。「やーめた」と年中児達はひとり抜けふたり抜け。コートの中は年長年少児に。風船はコートの外に出たり床の上をコロコロころがったり。すると「もう一つ風船ちょうだい!」左右各々のコートで風船がコロコロ・ポンポン。しばらくすると、年少児のパスを年長児が拾い上げ「いくよ」とポーン。左右それぞれのコー
トの中で風船がポーンポーンと行き来し始めています。年少児達も真剣です。小さい子を受け入れ、ゲームの形は変わったものの、お兄さんお姉さんバージョンで得意げに楽しんでいる年長児達。各々の成長に拍手!

【輝く瞬間】 2025年 1月

かもがわ幼稚園 園長 藤原 光二

 子どもたちは日々成長し、輝く瞬間を見せ
てくれる。

二歳児では、寂しさから泣いていた子も、お友達の名前を憶えて誘ったり、落ちている物を拾って届けてあげたりと、友達同士の交
流が多くなっている。

三歳児では、「お母さんがいい!」と大泣きしていた子が、少しずつ幼稚園生活に慣
れ、友達と一緒に遊ぶことの楽しさを感じ始め、送ってくれた母親を笑顔で「バイバイ!」
と見送っている。

四歳児では、砂場で一人遊びが多かった子どもが、いつの間にか友達を誘い、転がしド
ッジなどのルールのある遊びを自分たちで進めるようになっている。
五歳児では、百回跳びに挑戦する子どもたちが、もうすぐ達成しそうな仲間を取り囲
み、声を出して応援し、達成すると、自分のことのように喜んでいる。

全ての子どもたちが、様々な能力や可能性を与えられ、この世に生まれ、その能力を駆使して、自分の人格の土台を築いている、そ
んな成長の瞬間に立ち会い、私は子どもたちから生きる元気をもらっている。